はじめに:二重のリスクに直面する新時代の外国人雇用
「技能実習機構(OTIT)の監査が厳しいと聞くが、新制度になったらどうなるのか?」 「実習生を守るための機関だというが、企業を守る仕組みはないのか?」
現在、技能実習制度の監督官庁として機能している「外国人技能実習機構(OTIT)」ですが、2027年頃に予定されている新制度「育成就労」の開始に伴い、その役割と名称が大きく変わろうとしています。
新設される予定の「外国人育成就労機構」は、従来以上に監督・指導機能が強化される見込みです。さらに、新制度では「転籍(転職)」が解禁されるため、企業は「機構からの厳しいチェック」と「人材流出のリスク」の板挟みになる可能性があります。
本記事では、技能実習機構の現状の役割を整理しつつ、新制度への移行で何が変わるのか、そして厳格化する監査と人材流出リスクに対応するための「テクノロジーを活用した次世代の管理・定着手法(アップカルのソリューション)」について解説します。
1. 「技能実習機構(OTIT)」とは?現状の役割と権限
まずは、現在運用されている技能実習制度におけるOTITの役割をおさらいしましょう。
技能実習制度の適正化を担う「認可法人」
外国人技能実習機構(OTIT:Organization for Technical Intern Training)は、2017年(平成29年)11月の技能実習法施行に伴い設立された認可法人です。 その目的は、技能実習の適正な実施と実習生の保護を図り、人材育成を通じた国際協力を推進することにあります。
OTITの主な4つの役割
- 役割1:技能実習計画の認定 企業が実習生を受け入れる際に作成する「技能実習計画」の審査・認定を行います。計画が適正な報酬や労働条件を満たしているか、技能習得の目標が明確かなどをチェックする、いわば「入り口」の管理です。
- 役割2:実習実施者・監理団体への実地検査 OTITの最も強力な権限が「実地検査」です。企業(実習実施者)や監理団体に立ち入り、帳簿書類の確認や関係者への聴取を行います。 法令違反(賃金不払い、人権侵害など)が見つかれば、改善命令や認定取り消しなどの行政処分につなげます。
- 役割3:実習生からの母語相談・保護 実習生が母国語で相談できる窓口を運営し、人権侵害や労働条件のトラブルに対応します。必要に応じて、シェルターの提供や転籍(職場変更)の支援も行います。
- 役割4:送出機関との協力・排除 各国の送出機関との間で情報共有を行い、不適切な送出機関(高額な手数料を徴収するブローカーなど)の排除に向けた取り組みを行っています。
2. 2027年、「外国人育成就労機構」へ。新制度で何が変わるのか
政府は、技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設することを決定しました。これに伴い、OTITは「外国人育成就労機構(仮称)」へと改組・機能強化される予定です。
「国際貢献」から「人材確保・育成」への目的変更
新制度「育成就労」は、実態とかけ離れていた「国際貢献」という建前を廃止し、真正面から「人手不足分野における人材確保と育成」を目的とします。 新機構は、この新目的に基づき、3年間で「特定技能1号」水準の人材を育成できているかを厳しく監督することになります。
監理団体(監理支援機関)への監督強化と外部監査
受入れ企業をサポートする「監理団体」は「監理支援機関」へと名称が変わり、独立性・中立性が厳しく問われるようになります。 新機構は、監理支援機関に対し外部監査人の設置を義務付けるなど、癒着や不正を防ぐための監督機能を大幅に強化します。
「転籍(転職)」支援機能の追加
これが最大の変化です。技能実習では原則禁止だった転籍が、育成就労では「同一機関で1〜2年就労」し、一定のレベルに達していれば、本人の意向による転籍が可能になります。 新機構は、ハローワークと連携し、転籍を希望する外国人材の支援業務も担うことになります。
経営者にとっての「二重のリスク」
企業にとっては、以下の二重のリスクが生じます。
- 機構によるコンプライアンス監視が厳しくなる
- 待遇や環境に不満があれば、機構の支援を受けて堂々と転職されてしまう
もはや「安く雇って逃げられないようにする」というモデルは完全に崩壊します。
3. 機構の監査に耐え、人材流出を防ぐ「投資回収」の視点
新制度下で企業が生き残るためには、外国人材を「コスト」ではなく「投資対象(人的資本)」*と捉え直し、確実にリターン(定着・生産性)を得る戦略が必要です。
採用コスト(約60万円/人)が「掛け捨て」になる恐怖
外国人材1名の採用には、紹介料や渡航費などで約60万円以上の初期投資がかかると言われています。 もし、機構の監査で不正が発覚して受入れ停止になったり、1年で転籍されたりすれば、この投資はすべて損失(サンクコスト)となります。「適正な管理」と「定着」こそが、最大の投資回収戦略なのです。
監査で狙われる「帳簿」と「実態」の乖離
機構の実地検査では、タイムカードや賃金台帳だけでなく、日報や面談記録などの「実態」が徹底的に調べられます。「書類上は整っているが、現場では日本語が通じず放置されている」「相談に乗った記録がない」といった不備は、指導の対象となります。
「守り(監査対応)」と「攻め(定着)」を同時に実現する
コンプライアンスを守ることは、実は最強の定着策でもあります。 「法律を守ってくれる」「相談を聞いてくれる」「成長を支援してくれる」という安心感が、外国人材のエンゲージメントを高め、転籍を防ぐ防波堤となるからです。
4. アップカルが提供する「監査対応×定着」の最強ソリューション
アップカルは、テクノロジーとデータを活用し、機構の監査に耐えうる管理体制と、人材が定着する環境づくりを一気通貫で支援します。
【KABETORI】多言語日報で「指導・相談の証拠」を残す
アップカルの多言語日報アプリ「KABETORI」は、日々の業務報告や相談を「①母語原文」「②直訳」「③丁寧な日本語」の3層構造で記録・保存します。
- 監査対策: 「いつ、どのような指導を行ったか」「本人の理解度はどうだったか」がデータとして残るため、機構の監査において「適正な育成・支援を行っている証拠(エビデンス)」として提示できます。
- 定着支援: 母語で本音を書けるため、小さな不満や悩みを早期に吸い上げることができます。
AI感情解析で「離職・トラブルの予兆」を早期検知
KABETORIに蓄積されたデータから、AIがストレス語やネガティブな感情の推移を解析し、ダッシュボード化します。 「機構に駆け込まれる」前に、企業側でトラブルの種を検知し、早期介入(面談や改善)を行うことが可能です。これが、予期せぬ失踪や転籍を防ぐカギとなります。
【MICHISUJI】公平な評価で「キャリアの未来」を見せる
外国人材専用の人事評価システム「MICHISUJI」は、評価基準を言語化・多言語化し、キャリアパス(昇給・昇格の道筋)を明確に提示します。 新制度では「育成就労から特定技能への移行」が前提となるため、どのようなスキルを身につければステップアップできるかを可視化することは、機構が求める「計画的な育成」の証明にもなります。
5. 制度移行期に企業が準備すべき3つのステップ
2027年の新制度開始に向け、今から準備を始めることが重要です。
STEP1:現在の監理団体の見極めと自社体制の強化
現在契約している監理団体が、新制度の「監理支援機関」として十分な能力(独立性、支援力)を持っているかを見極める必要があります。同時に、監理団体任せにせず、自社でもKABETORIのようなツールを導入し、現場の状況を把握できる体制を整えましょう。
STEP2:現地育成(プレ教育)によるミスマッチの防止
アップカルは、海外の教育機関と連携し、入社前に専門用語や安全管理を教える「現地育成」を推奨しています。 来日前に企業のルールや日本での生活について正しい知識を持たせることで、入社後のリアリティショックを防ぎ、定着率を高めます。
STEP3:地域・行政と連携した生活基盤の構築
外国人材が定着するためには、職場の環境だけでなく、地域社会での「暮らしやすさ」も重要です。アップカルは自治体とも連携し、多文化共生のまちづくり(ローカルゼブラモデル)を推進しています。地域全体で彼らを支える姿勢が、長期的な定着につながります。
結論:機構の変革をチャンスに変える「仕組み」を持とう
技能実習機構から外国人育成就労機構へ。この変化は、単なる名称変更ではありません。 「不正な企業は排除される」「選ばれる企業からは人が去る」という、外国人雇用における淘汰の時代の幕開けです。
しかし、恐れる必要はありません。適正な管理と育成を行う企業にとっては、優秀な人材を長期的に確保できる大きなチャンスとなります。
アップカルは、「『壁』を取り除き、『付加価値』を生み出す」をミッションに、監査に強い管理体制の構築から、定着・生産性向上までを一気通貫で支援するパートナーです。
「新制度への対応に不安がある」「監査で指摘されない体制を作りたい」とお考えの経営者様は、ぜひ一度アップカルにご相談ください。 データと仕組みで、貴社の外国人雇用を「リスク」から「成長の原動力」へと変革するお手伝いをします。
