1. 「育成就労制度」はいつから?導入スケジュールと法改正の全貌
2024年6月成立、2027年までの施行へ
「育成就労制度」を創設するための改正入管法等は、2024年6月14日に可決・成立し、同21日に公布されました。施行日は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内」とされており、2027年(令和9年)中には新制度がスタートする見込みです。
「技能実習」から「育成就労」へ:看板の掛け替えではない
今回の改正は、単なる名称変更ではありません。1993年から続いた「技能実習制度」を発展的に解消(廃止)し、目的を「国際貢献」から「人材育成と人材確保」へと抜本的に転換するものです。これにより、実態と建前の乖離を解消し、真正面から日本の労働力不足を補うための制度として再構築されます。
経過措置:2030年までの並走期間
新制度施行後も、すぐに技能実習生がいなくなるわけではありません。施行前に技能実習として入国した人材は、経過措置として在留期間満了まで技能実習を継続できる予定です。そのため、2027年から2030年頃までは、技能実習制度と育成就労制度が並走する移行期間となります。企業は、この移行期間中に新制度への対応体制(キャリアパスの構築など)を完了させる必要があります。
2. 導入の背景:なぜ今、制度が大転換するのか
建前(国際貢献)と本音(労働力確保)の乖離
従来の技能実習制度は、「開発途上国への技術移転」を目的としていましたが、実態は「労働力不足を補う手段」として利用されていました。「労働力の需給調整の手段としてはならない」という法の理念と、現場の実態とのギャップが限界に達していました。
「人権侵害」と「失踪」という構造的欠陥
「転籍(転職)が原則できない」という縛りは、低賃金やハラスメントなどの劣悪な労働環境にあっても逃げ場がない状況を生み出し、人権侵害や失踪(2022年度は約9,000人)の温床となっていました。国際的にも「強制労働」との批判が高まり、制度の廃止は不可避となっていました。
選ばれる国になるための「キャリアパス」の明確化
円安や各国の経済成長により、日本が「選ばれる国」であり続けることは難しくなっています。「育てて帰国させる」のではなく、「育てて、特定技能へ移行し、長く活躍してもらう」という明確なキャリアパスを提示することで、優秀な人材を惹きつける狙いがあります。
3. 経営者が直面する「3つの激変」とリスク
- 最大の衝撃:「転籍(転職)」の解禁育成就労制度では、「同一の受入れ機関で1〜2年就労」し、「一定の技能・日本語レベル(A1〜A2相当)」にあれば、本人の意向による転籍(転職)が可能になります。魅力のない職場からは、コストをかけて採用・育成した人材が流出してしまいます。
- 「特定技能」への移行が前提となる育成義務新制度は、3年間の就労を通じて「特定技能1号」水準の人材を育成することをゴールとしています。企業には、計画的な技能指導や日本語教育の実施が義務付けられ、育成の成果(試験合格など)が厳しく問われるようになります。
- 受け入れコスト(手数料・教育費)の増大新制度では、悪質なブローカーを排除するため、受入れ企業と外国人が適切に費用を分担する仕組みが導入されます。渡航費や教育費などの初期投資は、これまで以上に増加する可能性があります。
4. 「育成就労」を投資回収(ROI)の機会に変える戦略
リスクばかりではありません。新制度は、意欲ある人材を長期的に確保できる大きなチャンスでもあります。
「安価な労働力」時代の終焉と「人的資本」への転換
「安く雇う」という発想を捨て、外国人材を「投資対象(人的資本)」と捉え直す必要があります。育成による投資対効果(ROI)を最大化するためには、以下の計算式を意識した経営が求められます。
採用コスト(約60万円〜)を無駄にしない定着の仕組み
外国人材1名の採用には、渡航費や紹介料を含め約60万円以上の初期投資がかかると言われています。早期に転籍されてしまえば、この投資はすべて損失(サンクコスト)となります。「定着(リテンション)」こそが、最大の投資回収戦略です。
「選ばれる企業」になるためのエンゲージメント向上
転籍が自由になるからこそ、従業員エンゲージメントが重要になります。「この会社で働き続けたい」と思わせるためには、日本人社員と同様に、キャリアの展望を見せ、日々のコミュニケーションを大切にする姿勢が求められます。
5. アップカルが提案する「定着・生産性向上」の具体策
精神論ではなく、テクノロジーと仕組みで「定着」を実現するのが、アップカルのソリューションです。
- 入社前の「現地育成」でミスマッチを防ぐ海外の教育機関と連携し、入社前に「現場で使う専門用語」「安全管理」などを教育する「現地育成」を推進。入社後のリアリティショックを防ぎます。
- 多言語日報「KABETORI」で言葉の壁をデータ化日報を「①母語原文」「②直訳」「③丁寧な日本語」の3層構造で保存。母語での本音を可視化し、誤解の原因を特定します。
- AI感情解析で「転籍・離職サイン」を早期検知AIがストレス語やネガティブな感情の推移を解析。小さな不満の段階でアラートを検知し、早期介入(面談など)を可能にします。
- 公平な評価システム「MICHISUJI」でキャリアを示す評価基準を多言語で明確化。昇給条件や「特定技能」への移行要件を可視化することで、納得感のあるキャリアパスを提供します。
6. 今後の展望:制度開始までに企業が準備すべきこと
- 自社の職種が対象分野(特定産業分野)か確認する育成就労の対象分野は、特定技能の「16分野」と一致する予定です。
- 受入体制(日本語教育・生活支援)の再構築就労開始前の「日本語能力試験N5相当」以上の合格要件への対応、および入社後の継続的な教育体制を整えます。
- 監理団体(監理支援機関)の選定と連携強化育成や定着支援において、真のパートナーとなる機関を選定し直すことが不可欠です。
結論―育成就労制度がもたらす可能性と企業の未来
育成就労制度は、外国人材を「労働力」から「宝(人財)」へと変えるための制度改革です。転籍のリスクはありますが、それは同時に「魅力ある企業には優秀な人材が集まる」というチャンスでもあります。
アップカルは、「『壁』を取り除き、『付加価値』を生み出す」をミッションに、テクノロジーを活用して貴社の外国人雇用を「成長のエンジン」へと変革するお手伝いをします。
