「現場の外国人に指示が伝わらない」「契約内容を理解しておらずトラブルになった」——。 グローバル化が進む現代、労務管理における「言葉の壁」は、単なるコミュニケーションの問題を超え、経営リスクそのものになりつつあります。
2024年10月末時点で、日本で働く外国人労働者数は過去最高の230万人を突破しました。さらに、2027年頃には「育成就労制度」が開始され、人材の流動性は確実に高まります。 これからの労務管理に求められるのは、担当者が必死に英語を学ぶことではなく、「誰でも正確に伝え、評価できる仕組み(言語インフラ)」を組織として持つことです。
本記事では、グローバル化時代の労務管理に不可欠な多言語対応のポイントと、テクノロジーを活用した次世代のマネジメント手法について解説します。
1. なぜ今、「英語・多言語対応」が労務管理の必須要件なのか
外国人労働者230万人突破。避けて通れない「多国籍チーム」化
厚生労働省の発表によれば、外国人労働者数は年々増加の一途をたどっています。製造業や建設業だけでなく、サービス業や介護分野でも、外国人材なしでは事業が回らない状況です。 もはや「日本語が話せる人だけを採用する」というスタンスでは、深刻な人手不足を解消することは不可能です。
「育成就労制度」開始で高まる“転職”と“権利意識”
2027年頃に施行予定の新制度「育成就労」では、一定の要件下で「本人の意向による転籍(転職)」が可能になります。 これは、「契約内容が不明瞭」「評価に納得がいかない」といった不満があれば、人材が容易に他社へ流出することを意味します。英語や母語での適切な労務管理は、人材を引き留めるための防波堤となります。
法令遵守(コンプライアンス)と安全配慮義務
労働基準法や労働安全衛生法は、外国人労働者にも等しく適用されます。 特に安全教育や雇用条件の説明においては、「労働者が理解できる言語」で行うことが求められます。言葉が通じなかったことによる労働災害や契約トラブルは、企業の安全配慮義務違反を問われる重大なリスクです。
海外拠点との連携とグローバル・ガバナンス
海外に支社や工場を持つ企業にとって、現地の労務管理状況を正確に把握することはガバナンスの要です。英語でのレポートラインや共通の人事システムを構築することで、不正やリスクを早期に発見できます。
2. 「英語力」が問われる具体的な労務管理シーン
【採用・契約】雇用契約書と労働条件通知書の多言語化
最もトラブルが多いのが入社時です。日本の労働法に基づく「雇用契約書」や「労働条件通知書」は、専門用語が多く、日本語が得意な外国人でも理解が困難です。 英語または本人の母語で併記された書類を用意し、給与の控除項目(税金・社会保険)や残業ルールについて、正確に合意形成する必要があります。
【現場管理】安全衛生教育と業務指示の「腹落ち」
「分かった?」と聞いて「ハイ」と返事をされても、実は理解していないケースが多々あります。 現場の安全ルールや業務マニュアルを英語化・多言語化することは、生産性を維持し、事故を防ぐための最低条件です。
【評価・定着】人事評価フィードバックとキャリアパス提示
外国人材が離職する大きな理由は「キャリアが見えない」ことです。 「何をすれば昇給するのか」「どんなスキルが必要か」を英語で明確に伝え、公平なフィードバックを行うことが、モチベーション維持の鍵となります。
【トラブル対応】懲戒処分や解雇などのデリケートな局面
万が一、問題行動に対して懲戒処分や解雇を行う場合、その理由と正当性を相手が理解できる言語で説明しなければ、不当解雇として訴訟リスクを抱えることになります。
3. 「担当者が英語を学ぶ」だけでは解決しない理由
専門用語の壁と「ニュアンス」の誤解
労務管理の英語は、日常会話とは異なります。”Social Insurance”(社会保険)や “Work Rules”(就業規則)といった専門用語に加え、日本特有の「あうんの呼吸」を言語化する難しさがあります。
多国籍化する現場(ベトナム、ネパール、インドネシア等)
現在増えているのは、英語圏ではなく、ベトナムやインドネシア、ネパールなどの人材です。英語が共通語として機能する場合もありますが、現場レベルでは「母語」でなければ真意が伝わらない場面も増えています。
担当者の業務負荷と属人化のリスク
ただでさえ多忙な人事労務担当者が、翻訳業務まで抱え込むのは非現実的です。また、「英語ができるAさん」に依存してしまうと、その担当者が退職した瞬間に管理体制が崩壊します。
4. テクノロジーで解決する。アップカルの「多言語労務インフラ」
個人の語学力に頼らず、組織として仕組みを作るために、アップカルは以下のソリューションを提案しています。
多言語日報アプリ「KABETORI」による3層データの可視化
現場のコミュニケーション課題を解決するのが「KABETORI」です。日報を「①母語原文」「②直訳」「③丁寧な日本語」の3層構造で保存・共有します。 単なる翻訳ではなく、「彼らが母語でどう思考し、何を伝えたかったのか」を可視化することで、言葉の裏にある誤解やニュアンスのズレを特定し、相互理解を深めます。
AI感情解析で「離職リスク」を早期検知
KABETORIは、日報データからストレス語やネガティブな感情の推移をAI解析します。 「英語で面談しても本音を言わない」という外国人材の、小さな不満の兆候をデータで検知し、早期にフォローを入れることで離職を防ぎます。
人事評価システム「MICHISUJI」での公平な評価運用
評価基準を多言語化し、スマホで確認できるシステム「MICHISUJI」を導入することで、「評価のブラックボックス化」を防ぎます。 「頑張れば報われる」という納得感を醸成し、定着率を向上させます。
5. それでも覚えておきたい!労務管理の必須英単語集
システムを活用しつつも、日常のやり取りで知っておくとスムーズな用語をピックアップしました。
契約・採用関連
- Employment Contract: 雇用契約書
- Terms and Conditions of Employment: 労働条件通知書
- Probation Period: 試用期間
- Fixed-term contract: 有期雇用契約
労働時間・休暇関連
- Work Rules / Rules of Employment: 就業規則
- Paid Leave / Annual Leave: 有給休暇
- Overtime Work: 残業
- Shift Work: シフト勤務
給与・保険関連
- Basic Salary: 基本給
- Allowance: 手当(Housing Allowance:住宅手当など)
- Social Insurance: 社会保険
- Withholding Tax: 源泉徴収税
- Year-end Adjustment: 年末調整
安全・トラブル関連
- Occupational Accident / Work-related Injury: 労災
- Safety Audit: 安全点検
- Harassment: ハラスメント
- Disciplinary Action: 懲戒処分
6. 「英語・多言語化」を投資と捉え、回収する戦略
採用コスト(約60万円/人)を無駄にしない
外国人材1名の採用には、渡航費や紹介料を含め約60万円以上の初期投資がかかると言われています。 言葉の壁による早期離職は、この投資をドブに捨てることと同じです。多言語対応への投資は、離職防止による「コスト削減」効果が極めて高い施策です。
現場の生産性向上とイノベーション
言葉が通じれば、作業効率が上がるだけでなく、外国人材からの「業務改善提案」も期待できます。 異なる視点を持つ彼らの意見を吸い上げることで、現場のイノベーションが生まれます。
人的資本経営としての開示
外国人材への教育体制や多言語対応状況は、人的資本経営における「ダイバーシティ推進」の重要な指標となります。 投資家や取引先に対し、「選ばれる企業」としてのブランド価値を高めます。
結論―「労務管理 英語」の先へ。テクノロジーで実現する多文化共生
「労務管理に英語が必要か?」という問いへの答えは、「英語力(個人のスキル)だけでは足りない。多言語対応の仕組み(組織のインフラ)が必要」です。
外国人材を単なる「労働力」としてではなく、共に成長する「パートナー」として迎え入れるためには、言葉の壁を取り払う「テクノロジー」と「正しい労務管理」の両輪が不可欠です。 アップカルは、KABETORIやMICHISUJIといったツールを通じて、貴社のグローバル労務管理を「個人の頑張り」から「組織の強み」へと変革するお手伝いをします。
「外国人材の定着に悩みがある」「現場の言葉の壁をシステムで解決したい」とお考えの経営者様・人事担当者様は、ぜひ一度アップカルにご相談ください。
